カウンターの歴史としてのひきこもり支援 1

2018年08月25日

 私聞風坊は、ひきこもり当事者として活動して、20年近くになるので、

 ひきこもりについて、ある程度の歴史を語れるようになっています。

 今回は、ひきこもりがどう扱われてきたかを、「カウンターという思いやり」の歴史として振り返る連続記事の最初です。

 まずは、その始まり。

 病気が原因とはいいきれないのに、24時間の内ほとんどを自室で過ごしている人のことを

 社会活動=他者と関わる活動を行っていない。

 社会=集団に参加していない。

 という意味で、「(社会的)ひきこもり」と名づけたのは、斎藤環医師です。

 1998年(H10)のことです。

 しばらくして全国組織の親の会が立ち上がります。
 2005年(H17)頃です。

 親の会は、当初から社会にうったえる活動を行っていました。

 我が子は、
 強迫性障害、被害妄想、人格障害を患っているのに、治療を受けずに家に引きこもっている。
 親だけの力では限界だ。
 社会が手厚く手助けしてくれないともうどうにもならない。

 として、
 社会からの制度的支援(法に基づく支援)を強く求める運動を続けます。

 ひきこもりと言えば当時は、痛々しいほどに病んだ若者。というイメージでした。

 (関係者の頑張りで)
 このイメージが一時日本を席巻しました。

 すると、
 イヤ、そんなことはない!
 とプロテストする意識が生まれるのは理なのでした。

 こもる人は病気じゃない。働いていないだけなんだ!
 です。

 あまりにも病気のひどさが強調されすぎた感を持ったのでしょう。
 ひきこもりの若者の尊厳を回復する意味合いで、
 老舗の若者支援民間団体が新しい運動を展開しはじめました。

 この時期、
 少子化が問題視されはじめたことや、バブル崩壊の影響もあり、労働人口の減少が問題となっていました。
 社会としては、労働力の確保=納税者の確保が急務となっていたのです。

 そんな社会情勢下、
 各種若者支援団体の働きかけが奏功し、
 働かない若者数十万人は、
 日本の将来的コストとなりうる社会問題だと社会が認識するようになりました。
 若者が納税者にならずに、生活保護等の社会保障費の消費者・タックスイーターとなる懸念です。

 年長者たちは自分たちの老後に不安を覚えました。
 納税している若者たちも同様の不安を覚えました。自分たちの稼ぎで多数の日本人を支えないといけない!

 加えてその頃、南蛮渡来のニートの概念が導入され、
 ほどなく、この概念に取り込まれる形で、
 「ひきこもりは働いていない若者」である。
 の認識が燎原の炎のごとく日本中に広がりました。

 ひきこもりは精神的に病んでいる子どもたちから、
 就労に困難を抱える若者たちであるニートに衣替えしました。

 (関係者の頑張りで)
 この時から、ひきこもり支援は就労支援が主軸となったのです。
 最初のカウンターです。

 (関係者の頑張りで)
 国も予算を組みました。

 お金が入る! というので、
 就労支援者が雨後の竹の子のごとく発生しました。
 
 こうして、
 ニート支援に象徴される
 10代~30代・若年者への就労支援は注力され、
 若年者への就労意識、就労教育の重要さも確立しました。
 学校にキャリアサポート部門ができたり、学校に企業が出向いて講話したり、
 卒業後(退学後)の進路保証に力が入れられはじめました。
 これらは今に続いています。

 でも、
 ひきこもり支援の効果は上がりませんでした。
 ※ひきこもり関係者は予想していたことだけど。

 支援効果のなさは、
 のちの8050問題と呼ばれる高齢化問題につながっていきます。

 2009年(H21年度)、合宿型の就労支援事業である若者自立塾は事業終了となりました。

 少なくともひきこもり支援としての若年者就労支援ニート支援は、
 この頃に終わりを迎えたと考えられます。

 ※とはいえ、サポステなどの若年者就労支援はもちろん現在でも継続しています。とても大事だもの。

 この項続く。

参考サイト
聞風坊の図書館 https://sites.google.com/site/monpubou/
 論考のページなど


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