人が寛容でいられる状態

2020年05月11日

最近の世の中で話題に上っている言葉には、以下があります。
たいがい英語です。

インクルージョンは包摂。

ダイバーシティは多様性。

ともに、
お互いの違いに寛容であることを重視しています。

と言うのも、
トライバリズム・部族主義・民族主義と言われるところの、
自分たちの集団のみ正しくて他の集団は正しくないので否定して排除していいという考えにもとづく、
相手を自分と同じ人間と扱わないことをお互いにしあうことで、
社会のデバイド・分断が進んでいる現状があるからです。

現在、
心を整える手段として産業界・教育界・スポーツ界・医療界・心理界などなどあらゆる場面で重宝されているマインドフルネス瞑想では、コンパッションとして思いやりが重視されていることはとても示唆的です。

さて、この寛容。

身体の中枢神経・自律神経系でも、
window of toleranceとして重視されています。

一般的には、トレランスを耐性と訳し、
耐性領域と呼ばれています。
直訳的に、耐性の窓なんて言い方もあります。
この状態にいるとき、耐性領域にいるとか耐性の窓の中にいるなんて言います。
さまざまな不測のストレスがかかっても耐えられる、受容できるという意味なのでしょう。

私はこのwindow of toleranceを研修で習ったのですが、その時の訳が寛容だったので、寛容という表現に愛着があります。
世界や他者と関わる場面について語る際に、耐える、忍耐というのがどうにも受け入れがたいですし。

だから、
寛容領域とか慣用の窓の中にいるという言い方も好みます。

人は、神経の覚醒状態・興奮状態・緊張状態によって、3つの状態になるのだそうです。

一つは、激しく活動的な状態。そのとき人は、何かまたは誰かを攻撃するか逃走するかしている。

もう一つは、とても不活動な状態。動かない、固まっている状態。そのとき人は、じっとしている。意識を失っていることもある。

そしてもう一つは、イイ感じで活動的でかつイイ感じでじっとしていられる状態。人や動物や世界と穏やかに交流している。
反応はいいけど攻撃的でもなく、逃げ腰でもない。
じっとしているときも穏やかにそこにいて、思いやりを持って周囲を受け入れ、周囲からも優しく受け入れられている感じ。

一番最後の状態にいるとき、耐性領域にいると言います。
周囲と自分に寛容でいられる状態ですね。

この状態のときは、
心拍数を抑えるヴェーガルブレーキがゆるんでいるので、
普段より脈拍は少し多く、ゆえに脳や全身の筋肉に血液が豊富に行き渡り、穏やかに活動的です。

そして、
顔面に末端がある腹側迷走神経が活発になるので、表情豊かになり、声に魅力が増し、
人と心地よく交流します。
相手はきっと、この人、優しいし関わりやすいなぁと感じるでしょう。
そんな状態です。

さまざまな不測の事態が起き、
それらに対処する際、
寛容性が問われる場面では、この状態・寛容領域を意識することが役立つかと思います。

例えば、
攻撃的な相手に対して、
こちらは慣用の窓の中にいれば、攻撃的にならずに交流できます。
もちろん、一目散に逃げ出したりもせずに。
そうして、慣用の窓の中に帰ってくることを手助けします。
お互いに寛容の窓の中にいるように働きかけるのです。

もし相手が、ぼーっとして心ここにあらずなようだとしたら、優しく声をかけ近づき、「今ここ・ナウアンドヒア」にいざなうでしょうか。

このようなことから、耐性領域・慣用の窓を広げることが大事とされています。
そのためには、前述のマインドフルネス瞑想がいいんだそうです。

穏やかに今ここにいるあるがままの自分(の状態)を、感じ、観察し、受け入れる。
そういう姿勢が身につくようです。



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