他人の中でやっていく話

2018年05月15日

 『"育つ"こと"育てる"こと -子どもの心に寄りそって』
  (田中哲著 いのちのことば社フォレストブックス刊 2016)

 を読んで心打たれての記事です。

 とりわけ
 「社会的に自立をするとは、知らない人の中でひとりでやっていくことです」(p25-26)
 の一文が印象に残りました。

 不登校・ひきこもりでも生活困窮でもよく目標とされるのが自立です。

 たいがいは、自分で働いて収入を得て暮らしていく経済的自立のことを言いいます。

 厳密に言うとそれは自活なのでしょうが、なぜか自立と呼ばれています。

 そしてそこを目指すのが一般的な支援目標となっています。

 さてこの自立、
 当事者本人の側から言わせると、自立って何?
 となります。

 というのも、
 当事者本人の多くは、経済的な自立以前のナニカで苦労しているからです。

 そのナニカが解決できなくて、またはそのナニカに取り組めなくて苦労しているんです。

 その謎のナニカ。
 この一文でなんとなく説明ができました。

 それは、

 知らない人の中でひとりでやっていく方法

 です。

 私聞風坊を含む当事者本人の多くは、
 これを知らないので、その先の自立がとても困難なのです。
 というか、自立って何? どうやってやるの? 状態なのです。

 私たちは、
 ふと足を踏み入れた
 見知らぬその場で、どう気持ちを落ち着かせ、

 見知らぬ人たちと、どう関わればいいのか?

 が分かりません。
 どう振る舞えば、どう自分を調整すればいいのかが分からず、戸惑うばかりなのです。

 もし、
 自分の気持ちの落ち着かせ方

 自分の気持ちとの折り合いの付け方

 自分の気持ちの奮い方

 を身につけていれば、さほどのストレスなくやっていけるでしょう。
 ※↑本では自己統制と指摘されていました。

 よく考えたら、知っている人の数より知らない人の数の方が圧倒的に多いんです。

 街に出れば簡単に分かります。
 知っている人は時々会うけど、
 知らない人はそこかしこにいっぱい。

 そんな人に、
 どう声かけすればいいか?
  こんにちは。いい天気ですね。

 声をかけられたらどう応じればいいか?
  え? あぁ。郵便局ならこの道まっすぐですよ。えぇ、えぇ、ですが~。いえいえどういたしまして。

 どう協力を求めればイイか?
  すいません、青島方面はどの時刻表を見ればいいですかね? あ、休日だからこれですね。ありがとうございます。助かりました。

 電話の仕方、
 扇風機の買い方、
 ゴミの出し方、

 授業中の質問の仕方、

 なんかよく分からない状態になった時に人に相談する方法、

 暮らしの中でちょっと立ち止まってしまったときにどうすればいいか?

 その方法を知っていると心強いのです。

 自分を頼みにやっていけます。

 その方法を知らないと、とっても不安。
 自信はありません。
 自分を信頼できないからです。
 
 昔は、親やコミュニティーの中で自然と身に付いてきたようです。

 不登校・ひきこもりや困窮などで、他者と触れあう機会が限られていると、

 暮らしていく方法を身につける機会に恵まれません。

 暮らしていく方法を身につける。
 当事者本人たちの自立を考える上で、とても大事なことのように思えます。
 
 ちなみに現在、私聞風坊は、この力だいぶ身に付いてきました。



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