逆境的小児期体験ACEについて知ったのでした 2

2020年10月08日

『小児期トラウマと闘うツール――進化・浸透するACE対策』(ナディン・バーク・ハリス著 片桐恵理子訳 パンローリング社 2019)
https://www.panrolling.com/books/ph/ph95.html
を読んだのでした。

その感想の2です。


子どもの頃に暴力や虐待などの逆境体験をした場合、それが人体に悪影響を与えて、心と身体の病気を大人になっても引き起こす。
それは、人類共通の反応であり、人類のほとんどが逆境体験を経験している。
だから、早期発見し、影響を見極め、必要なケアを行う。
それが社会で標準化される。

これが、
逆境的小児期体験・ACE(Adverse Childhood Experiences)研究を中核にすえた医療実践している著者の願いでした。

血液検査でガンマGTPが高かった。標準体重をだいぶ超過し、血圧も高かった。
だからまずはお酒を控え、食生活指導を受け食事を改善し、運動のプログラムに参加する。
それで効果がないなら降圧剤の服用も考える。
加えてACEスコアが4点以上だったから、逆境的体験の回復プログラムも取り入れる。
そんな感じでかなとイメージしました。

さて、私が注目したのは、
逆境的体験の一言でした。

これまで、子どもに対する悪い影響として取り沙汰されている事柄は、

虐待、
望ましくない養育であるマルトリートメント、
体罰、
いじめ、
が多いのですが、

これらは、
ぜんぶ加害行為に焦点が当たっています。
害を受けた子どもの側よりも。

害を与える行為はダメです。
という視点です。

そう言えば、
有害図書もそうですね。
害のある図書。焦点は図書です。子どもではない。

一方で、
逆境的体験となると、
体験した側に着目しています。

その子が、逆境に遭遇した。
逆境を体験した。
逆境を体験したのはその子。

害を受けた、害を受けている人にまなざしを送っている。
害を加える行為や、害を与える人ではなく。

この視点が、新鮮でありとても強く心を動かしたのでした。
そして、
すでにもう研究がだいぶ進み、支援に取り組まれ、成果を上げていることも、大きな喜びでした。

とはいえ当地でもまだまだの様子。
子ども時分に手当てされる人は多くなく、
大人になって、いわゆる成人病や大きな病を得てから、初めて子どもの頃の逆境的体験を思いやられる人は少なくないようです。

ましてや日本では?

そんなことを思ったのでした。


  
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