逆境的小児期体験ACEについて知ったのでした

2020年10月04日

『小児期トラウマと闘うツール――進化・浸透するACE対策』(ナディン・バーク・ハリス著 片桐恵理子訳 パンローリング社 2019)
https://www.panrolling.com/books/ph/ph95.html
を読んだのでした。

虐待などのトラウマが与える悪い影響と言えば、
精神的な不調ばかりが注目されがちです。

ところが、
身体の不調もその影響が大きいようなのです。
※経験者は薄々気づいてます。

ACE研究はこれを明らかにします。
逆境的小児期体験・ACE(Adverse Childhood Experiences)研究。

これによると、
家庭内の虐待に限らず、犯罪が頻発する環境や、貧困によるストレスなどの環境面の影響が、
低体重や喘息など子どもの心と身体に悪い影響を与えていて、
その影響は、大人になっても、そう、一生つきまとうのだそうです。

大人になってから、
食習慣から糖尿病や肥満による高血圧や心臓や血管の障害などの病気になったり、
喫煙習慣から肺の病気になったり、
アルコール摂取習慣から依存症やいろいろな病気になったりすることも、
自己免疫疾患や甲状腺などの病気も、
子どもの頃の逆境的体験の影響があるようなんです。

逆境というストレスが、
人のストレス反応系(免疫系・ホルモン系・自律神経系など)に問題を引き起こし、それが長年にわたって、ときに一生、影響を与え続ける。

そういうことから上記の身体・人体の病気の治療や予防に、
ACE研究の知見を取り入れると、効果てきめんなんだそうです。

さて、
この逆境的体験ですが、ACE研究は、
逆境的体験は、人種性別国籍地域困窮富裕などに関係なく
ほとんどの人が経験していることを明らかにします。
そして、
体験の数が多いほど人体に与える影響も大きくなるとか。

逆境は人体に甚大な影響を与える。
のですね。

だから、
子どもの段階で逆境体験を発見し、早期ケアを始めることが重要と指摘します。

もちろん、
大人になってからでも、現病気の原因でもある逆境体験のケアを始めることが現病気の回復に役立つ!

そのために、
逆境体験のチェックリストを作り多くの医療福祉機関で活用しているのだそうです。
最初の段階(予診・問診)でチェックを実施するようです。

逆境は人体に甚大な影響を与える。

人類共通の仕組みゆえ。

実は、
私聞風坊のひきこもり研究も同じ視点・仮説に基づいていました。

人は誰でもこもる。

この仮説を実証したくてずっと研究してきたのでした。
成功すれば、老若男女人種国籍などの区別なく、こもるほどの苦痛体験の解消・軽減の道筋が見えるだろうと予測したからです。

その結果、
身体反応という結論に達しました。

人類共通の反応。
問題。
そして課題。

となれば、何が起きるか?
または何が起きないか?

その第1に挙げられるのはスティグマだと思っています。

実のところ、幼児期のトラウマ体験は、
その人を特殊な経験をした人にしてしまいます。
これが、
特殊な人という烙印・スティグマを押すことになるのです。
そうなるともうその人はフツーの人ではなくなります。
ひきこもり界では、
当事者論が盛んですが、これもこのスティグマとの葛藤から来るものと思っています。

障害者・(性)被害者・というスティグマと戦っている人たちも思いは同じでしょう。

トラウマ体験をすると、
逃げる努力が足りなかったから。
注意を怠っていたから。
無力だったから。
快復に力を入れてなかったから。
なんて、自分を責めがちなんでです。
他者からも非難を受けることも少なくありません。
支援者からですら。

そしてそれは、自分のことを
弱い、人と異なる、人に受け入れられない、
特殊な存在として認識することにつながります。
こうして、
自分でスティグマを押し、他者からも押されます。

逆境的体験に対処するように人体が反応して、
それが長期間にわたり心身に影響を与えている。

これは自然な人体の反応なんだ。
この反応は人としてフツーの反応なんだ。

自分の身体に何が起きているのかが分かれば、何をすればいいのか、何をしなくていいのかは明らかになります。

人類共通の反応であることが科学的根拠に基づいて解明されれば、

苦痛から解放される道が開かれるのです。
スティグマからの解放とともに。

そんなことを思った一冊でした。