宮崎県ひきこもり地域支援センターの報告書について思ったこと 3

2019年10月31日

国のひきこもり対策推進事業にもとづいて、
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html

宮崎県ひきこもり地域支援センターは、宮崎県精神保健福祉センター内に設置されています。(平成26年7月~)
http://seihocenter-miyazaki.com/hikikomori.html

先日、平成26年7月~30年6月までの4年間の支援状況についての報告書が公開されました。
上記URLの最下部にあります。

これについて、思うところを記します。その3

本人の年齢は、10・20代が5割、30・40代が4割と、比較的若い人についての相談が多いようです。

ということから、
学齢期・在学中から支援が必要に思えます。

それは、
ひきこもり支援では、学校との連携が大事ということを意味していると思われます。

また、
これまでに医療機関など他の支援機関に相談したことがある人が9割近くとなっています。
これは、全国的な傾向と合致します。

思いつく支援機関に相談してみた。
それでも結果が芳しくないから、専門のひきこもり地域センターに相談した。
と言う経過なのでしょう。

さて、センターは、
このような感じで支援要請があった内の、
4割を他機関紹介やアドバイスのみで終結しています。
1次窓口(最初の相談窓口)として初期設定されているからのようです。
1次窓口の最大の役目は適切な支援機関につなぐことにあります。
実はこの「適切な」というのが大事なんです。

上記にもあるように、
こもる人やその家族は、支援・相談機関との相性が悪く、そのために支援を受けなくなっている場合がとても多いことはすでに分かっています。
支援機関を利用したことで相談事が解決しないばかりか逆に傷ついた経験をした人は多いんです。

だから、
ひきこもる人と家族はなかなか支援を受けないんです。

ゆえに、
紹介やアドバイスだけで終わったら、ほんとにそれで終わりになってしまうのです。
こもる人と家族には、支援機関を利用する力(元気とスキル)が不足しているからですね。
このことから、
受援力がつき、その力を発揮できるサポートが必要です。

さて、
ひきこもり支援の有力な候補の1つである病院は、治療意欲といって相談に来た人が病気を治したい意欲があることが大前提の支援機関です。
この意欲がないと、医療の効果が期待できないからです。
ところが、
社会でやっていくことに絶望しているこもる人に、この治療意欲、回復意欲を期待するのは現実的ではありません。

治ったところでいいことあるの?
という思いをたいがい持っているようだからです。

これゆえ、
病気が疑われるから、またはすでに通院しているから病院利用を勧めて終わり。
という対処は適切ではありません。

治療意欲がない人を治療意欲が必須の病院につなぐことになるからですね。
適切な支援機関にしっかりつなぐのでなければ、1次窓口の役目を果たしていることにはなりませんね。

もし、
適切につなぐとなると、しっかり治療意欲を高めてからつなぐ。
となるでしょうか。

実際のところ、
医療などの支援が必要だけども支援者不信や将来への悲嘆から支援機関を継続利用しない特徴のあるこもる人(とその家族)
には、
それらの支援機関を継続利用するための支援が必要です。

つなぐという言葉に関連付けるならば、
これは、支援機関につなぎ続ける支援と言えるかもしれません。

また、
センターは一次窓口だけではなく地域の拠点という役目も担っていますが、
地域の支援機関につなぎ続ける支援は、
支援機関を継続利用しないというこもる人と家族の特徴をよく知った、地域ひきこもり支援の拠点たるセンターこそふさわしいと思えます。

特に最近、
ひきこもりの一次相談窓口として自立相談支援機関(センター)が設定されている困窮者自立支援制度ができてからは、
地域の窓口機関のバックアップが期待されています。

ところが、
報告書からは、どうにもそのふさわしい姿はうかがえません。
一次窓口として紹介重視の支援の基本姿勢が貫かれています。

相談者が、
「ひきこもり支援」を看板に掲げる専門公的機関であるひきこもり地域支援センターにせっかく相談に行ったのに、
たらい回しされた。どこも同じだ。見捨てられた。
って感じを持たないか? 気になるところです。

ひきこもりは、複合的な問題を抱えているので、1機関のみで対処できません。
その1機関ですら継続利用がおぼつきません。

だから、センターは、
紹介して終了でなく、直接支援から間接支援に支援の形を変える。
あるいは、
紹介先の支援を見守る、必要ならば(動機づけ)介入する。
などの形で、こもる人とその家族との関わりは継続していく。
という意識をもって、
とにかく全ケースを支援継続ケースとするのが、ひきこもり専門拠点機関としては適切だろうと思うのでした。


つづく
  


Posted by 聞風坊 at 06:00Comments(6)ひきこもる

宮崎県ひきこもり地域支援センターの報告書について思ったこと 2

2019年10月30日

国のひきこもり対策推進事業にもとづいて、
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html

宮崎県ひきこもり地域支援センターは、宮崎県精神保健福祉センター内に設置されています。(平成26年7月~)
http://seihocenter-miyazaki.com/hikikomori.html

先日、平成26年7月~30年6月までの4年間の支援状況についての報告書が公開されました。
上記URLの最下部にあります。

これについて、思うところを記します。その2

相談は、まず電話から始まる場合が9割で、予約なしの来所もあるそうです。
なんとなく分かります。
とにかくセンターに行ってみる。手順を踏んでいたら気持ちが萎えてしまうから。
そんな気持ちの現れのような気がします。

相談してきた人は、本人以外の家族(とりわけ母親)が7割、
関係機関から1割、の割合。
本人からもあったそうです。

その内、
いきなりセンターに相談したのではなくて、どこか別の相談機関に行って、そこで紹介された場合が6割ほどみたいです。

ということから、
より身近な相談機関(一次窓口)の充実が重要に思えます。

それから、
相談してきた人は宮崎市在住の人が6割。
となると、
宮崎市が単独でひきこもり支援事業してもいいようですね。

この理由として、
センターが宮崎市に設置されているからという分析がなされていました。
となると、他の市町村の人は地理的に遠いからセンターに相談しづらいということなので、
他の市町村で相談や支援が受けられるように、センターというか県は対策する必要があるということになりますね。

さて、
相談者の主な訴えは、子どもに対する対応方法と将来の不安についてだそうです。
本人の精神状態を尋ねた項目から、家族が本人のどんなことに困っているかというと、
暴言・暴力・イライラしてることみたいなので、
それらへの対応を教えてほしいという気持ちが強いようです。

逆に言うと、
そういう激しい行動がない場合は、相談する気持ちにならないのかもしれません。

報告書では、
ひきこもり重篤度と称して、本人が外出できている程度といろいろなこととの関連を分析しています。

それによると、
本人が外出ができる場合は、初回相談に行く年齢は高いという分析結果が出ています。
そこそこ外出して、小さく穏やかに過ごしていると、おおごとじゃなさそうに見えるので、支援につながりづらくなっているようですね。

ひきこもりも軽いようだから大丈夫と思っていると、
年齢が上がり健康面や就労面で選択肢が狭まってから支援が始まることになりかねません。
注意せねばならない点ですね。

つづく  


Posted by 聞風坊 at 06:00Comments(0)ひきこもる

宮崎県ひきこもり地域支援センターの報告書について思ったこと 1

2019年10月29日

国のひきこもり対策推進事業にもとづいて、
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html

宮崎県ひきこもり地域支援センターは、宮崎県精神保健福祉センター内に設置されています。(平成26年7月~)
http://seihocenter-miyazaki.com/hikikomori.html

先日、平成26年7月~30年6月までの4年間の支援状況についての報告書が公開されました。
上記URLの最下部にあります。

これについて、思うところを記します。

4年間で、相談を受けた件数は、135ケースだったそうです。

いったん相談を受けたケースは、
全スタッフ参加(7 名;医師、保健師、看護師、精神保健福祉士、心理士)で構成される
受理会議で支援の方向性を検討するそうです。

ここで、相談のあったケースをセンターが受理するかどうかを判断するのですね。
報告書では、受理するケースを継続支援ケースと呼んでいます。

センターが支援すると判断したケースの数は、
4年間の全135ケース中、85ケース。
他の50ケースはアドバイスしたり他の支援機関を勧めたりして終わったようです。

85ケースについては、
ひきこもり支援コーディネーター4名が中心となって支援する形です。
ちなみに、単純計算すると年間21ケース。月に2ケース未満の数を4人で支援していることになりますね。

県が行った調査だと県内のひきこもり者の数は601人でした。
数の信ぴょう性はさておき、ほぼ確実に601人はいると言うことが把握されています。
https://www.mken-minjikyo.jp/news/n_pref/166.html?fbclid=IwAR1_49rC5I_TfpqlGFhoE2sglFUPL9hjjW_XAW11NaTUtm1olPQ16fa933w

これらの数字を見て思ったことは、
少ない。

県内唯一の「ひきこもり支援」を関する専門機関なのだから、
せめて601ケースはカバーしないといけませんね。

つづく
  


Posted by 聞風坊 at 06:00Comments(4)ひきこもる

トラウマ関連のことをよく知った上でのケアを実践する本を読んだのでした

2019年10月25日

 『トラウマ・インフォームドケア Trauma-Informed Care』
(川野雅資著 精神看護出版 2018)
 http://www.seishinkango.co.jp/s2_bo089.html

を読んで感動したのでした。

自分が求めていたのは、
やりたかったのは、

これだ!

と強く思ったのでした。

インフォームドというのは、
詳しく知っているとか、だからどうすればいいのか知っているという意味だそうですね。
インフォームドコンセント(※医療側の詳しい説明と患者の同意)で有名です。

トラウマについて詳しく知っている。

どんな出来事がトラウマになるのか。

どんな影響を与えるのか。

どうやって回復していくのか。

その道筋はどんな風か。

その道筋に必要なものはなにか。

何をせねばならないか。

何をしてはならないか。

などなどを、詳しく知っていて、実践する人たちが増えたら、

どんなに社会がよくなるでしょう。

病院でトラウマを負うことは少なくありません。
再受傷とか、セカンドレイプとか言われます。

カウンセリングやセラピー場面でも、児童相談所、児童養護施設でも。

警察でも、学校でも、地域の暮らしの中でも、親戚間でも、

もちろん親兄弟姉妹の間でもです。

だから、
トラウマ・インフォームドケアが実践されることを期待します。

そして、
少しでも理想のトラウマ・インフォームドケアができるよう、
最善を尽くしたいと思います。

  


Posted by 聞風坊 at 06:00Comments(0)本の紹介トラウマ

ここじゃないと思うのは「属するな」という命令に従っているからかも

2019年10月20日

 これまで何回か紹介してきましたが、

 TA・交流分析の根幹理論の一つに

 禁止令(最近は強制命令という場合もあります)と言うのがあります。

 生き残るために、自分を律するメッセージのうち、否定形のものです。

 その1つが「属するな」です。

 集団に属するな。

 という意味で、

 具体的には、

 うちの家族に属するな。

 地域に属するな。

 学級に属するな。

 国に属するな。

 友人関係に属するな。

 なんてなります。

 そんなことするのは子はうちの子じゃない。

 と言うメッセージをしばしば強く受けた子は、

 家族に属することを禁止するようになる。

 家族の一員であることを許可しないようになる。

 と考えます。

 こんな感じで、

 地域住民に属せず、

 学校や学級の一員となることを認めず、

 友人が集う場にあっても、
 ここに属しちゃいけないとして、

 とその一員であることを認めません。

 具体的には、

 ここは違う。

 自分の居るべき場所じゃない。

 なんか違う。

 という認識、感覚として感じられると思われます。

 この感覚、

 不登校やひきこもる人の多くが、

 または、

 死にたいより消えたい感じ。

 を持つ人の多くが抱くようです。

 ここじゃない。

 ここでもない。

 どこにも居場所がない。

 属する場所がない。

 そもそも属したら息苦しい。

 とはいえ、
 そこにいるのもなんかイイ感じ。

 と言うことで、自分なりに折り合いをつけます。

 属している感じがしなければ、いてもいい。

 だから、気配を消していればいい。

 消えた状態・見えないならいてもいいかな。
 ※かつて「見えるな」という禁止令がある! と議論になったこともあったとか。

 姿形は見えないから、属してることにはならないし。

 人が集まる場の辺縁にいて、機嫌がいい人。

 みんなとは距離を置いているけど、いつもいる人。
 
 属していることが目立つ感じじゃないけど、属している。

 そんな交流をしている人。

 「属するな」の命令に従っているかもしれません。

 とはいえ、実のところ集団の他のメンバーは、
 あなたが、そういう感じで自分たちの集団に所属していると当たり前に思っていることも少なくありません。

 客観的な結論として、
 つまりすでにもう属しているんです。

 となると、

 所属する集団の名前を自己紹介の時に使うなど、
 少し属してもイイかもしれません。

 自分の意見を言うなど、
 少しばかり姿形をはっきりさせてもイイかもしれません。